では、どうやってたくさんのネコの画像を映像AIに覚えさせるのでしょう。
子供がネコを覚えるとき、歩いているネコ、寝ているネコ、伸びているネコ、白いネコ、赤トラ、黒トラ、ミケなど、さまざまな姿勢や色のネコを見ることで、ネコという概念を理解していきます。これをコンピュータで高速に実施するためには、まず、さまざまなネコのビデオを集めてくることが必要です。そして集めてきたビデオを、例えば1秒間隔程度にカットして膨大な写真集を作ります。
そのうえで、それぞれの写真に対して、その写真の中の、どの部分がネコなのかを示すマークを付けてあげます。そして、出来上がった、ネコの部分がマークをされた写真を、コンピュータの力を使って一気に映像AIに覚えさせます。
このとき、ネコなど、1つの物体に関して必要な写真の枚数は、2万枚程度です。もちろん、ネコだけを覚えさせるとイヌが出てきてもネコと判断してしまうので、出てきて間違いそうな動物については、ネコの3割程度の枚数(例えば、ネコの画像が2万枚あったら、犬の写真は6000枚程度)を用意して覚えさせます。
これによって、映像AIは、おおむね小学生低学年程度の映像の判断力を持つことになります。
学習による映像AIとはWhat is AI?
【学習】生まれたての子供に、これはネコ、これは犬、これは自動車と教えていくのと同じようなことを高速なコンピュータを利用して短時間に膨大に行います。
子供にネコを覚えさせるときには、自宅のネコやお隣のネコ、公園に居るネコ、テレビに映ったネコなど、たくさんのネコを教えているうちに初めてみるネコでも「ネコ」であると判断できるようになります。
【除外学習】ただ、見る動物がネコだけだと毛が生えている4本足はすべてネコだと理解してしまいイヌを見てもネコだと判断してしまいます。ネコを覚えさせるときには、同時にイヌやウシ、ヒツジなどを覚えさせることでも特徴の違いを理解させ確実にネコを区別できるようにしていきます。

【後処理】しかし、ネコとピューマはとてもよく似ており、見た目では区別できないときがあります。そのような場合は、コタツで寝ていればネコ、鉄の檻に入れられていればピューマという、外見以外の状況を判断させることで、見た目は同じでもネコを判断できるようになります。
【誤検知】とはいえ、ピューマがコタツで寝ていたらネコと判断してしまうかもしれません。これは、映像AIの限界ということになります。これは、AIが100%でない理由でもあります。だって、人間であっても区別できないときがあるのですから。

映像AIに与える覚えるべき画像
映像AIでは区別できないこと
人であれば、子供でも簡単に判ることをAIが判断できないときがあります。
本物のネコと、ぬいぐるみのネコを区別してみます。声をかけて動くか、そもそも呼吸をしているか、さわったら暖かいか、シッポを引っ張ったら嫌がるかなど、子供でも簡単に区別することができます。
しかし、この判断を映像AIは出来ないのです。映像AIはネコを触ることができませんし、声をかけることもできません、廻りこんで後ろ側を見ることもできません。つまり映像AIは、目の前にあるものを判断するときに、それを、モニター越しに一方的に送られてくる映像のみによって判断するしかないのです。
AIが、映画のアンドロイドのように、物体に積極的に接近し、温度を感じ、匂いを判断し、音を聞き分け、五感に相当する情報を総合的に判断できるようになるときまで、私たちは、この限定されたAIを利用し続けることになります。もちろん、音も含めた判断など、さまざまな研究がなされており、無限のコストを掛ければ、いまでも、そこそこの判断はできるAIを作ることはできますが、無限と言えるほど膨大な開発時間が必要となってしまいます。

それでも映像AIの良いところ
【映像AIは我慢強い】
人に「家の前をネコが通ったら教えて欲しい」とお願いし、ネコを監視し続けるのは難しいです。飽きや睡眠、トイレ、食事など、さまざまな要因があります。ですが、映像AIなら電気だけ与えておけば24時間365日、休まず、気を抜かず、文句を言わず、コストも低く働いてくれます。
【映像AIは目が良い】
暗い夜でも監視カメラの明るさの調整機能で昼間と同じ程度の判断をしてくれます。さらに、とても遠くを歩く動物がネコなのか子ヤギなのか、望遠機能により判断をしてくれます。24時間に1秒だけネコが顔を出したら教えてくださいなんて、人間には無理なのですが、映像AIは、平然と当然のようにやってのけます。映像AIは、あまり正しい判断は出来ない代わりに、その判断力の限りにおいて、24時間365日、明るくても暗くても、寒くても暑くても、雨でも風でも、働き続けてくれるのです。
今でも、道路の脇に折り畳みイスをおいて通行量調査を実施している姿をみますが、年に何日か8時から17時までの正確な交通の分析をするのも良いですが、映像AIで、24時間365日、全自動で交通の分析をするのも悪くないのでは?

オーダーメイドのAIを
導入するためのステップ
オーダーメイドの映像AIの作り方
いま、私たちは、転倒検知と火災検知の映像AIを、パッケージ製品として開発して販売しています。これは、パートナーさん経由で簡単に、安価に購入いただけます。
ですが、あなた自身の特別な映像AIが欲しくなるときがあります。
たとえばおなたの会社の工場に特別な塗装をしたトラックが到着したら、その通過数をカウントして欲しいとか。
となると、これまで説明してきたように、まずは、「特別な塗装のトラック」を覚えさせるところから始めることが必要です。雨の日もあれば雪の日もあり、朝もあれば夜もありますので、出来る限りさまざまな環境で撮影されたビデオを用意していただき、それをたくさんの画像にカットして、映像AIに覚えさせていきます。
今回の例のとうに、「特別な塗装のトラック」のように特徴がはっきりしたものであれば、おおむね5000枚程度の画像を覚えさせれば、それなりの確率で検知できるようになります。5000枚の学習のための映像を作るために掛かる時間は、おおむね一人で1か月程度です。
そして、その映像AIを現場に入れてみて、検知漏れや、誤検知(違う模様のトラックを検知してしまう)の具合をみながら、1~3か月かけて調整していきます。
最初の1年間は、春夏秋冬での日光の変化があるため、四季折々のビデオでの追加学習をしてくことが必要になるでしょう。
このような手順によって、あなたのためだけの映像AIを作っていくことができます。

映像AIと距離、画角、仰角
映像AIの仕様書を見ていきますと、検知できる距離、カメラの画角、カメラの仰角などの定義がされているときがあります。
これらの数字は、基本的に目安です。実際には縦横、十分なサイズで物体が映っていれば遠くでも検知できますし、小さければ近くでも検知できません。画角が広ければ広い範囲を映せる代わりに、物体が小さく見えるようになるので、全体的な検知率は下がる傾向になります。カメラの仰角は、学習させるときにどの角度の物体を学習させたかに依存しますので、映像AIの特徴ではなく、作り方の問題です。
映像AIの導入時には、その映像AIが、どのようなサイズのどのような方向から撮影した映像を学習しているのか確認し、それが自分の狙いと合っているかを確認することが重要です。
※画角:水平方向に横にどの程度見えるかの角度。画角が広いほど広い範囲を見られますが、縁のほうの映像がゆがむので、縁のほうの物体の検知率が落ちます。
※仰角:カメラと水平方向にみるか、カメラから斜めに見下ろすか、真下にあるかなど、カメラの上下関係の角度

映像AIに適したカメラ
Q:既設のカメラを使えますか? A:もちろん使えます。
ですが、新しいカメラを購入したほうが精度が上がるのは事実です。少し前のカメラですと、解像度は1280x720(1M)であったり、1280x960程度かと思います。目視の監視には十分なのですが、映像AIで分析するには、もう少し高解像が必要となり1920x1080での映像使用を推奨します。
4Kの高解像が良いかというと、今度は分析するコンピュータ側の性能がついてこなくなってしまうので、やはり、1920x1080程度が現在では最適となります。
カメラの性能は、5年単位程度で進歩しており、特にカメラの処理性能の問題でブロックノイズが出てしまったり、明るさの調整機能が低く夕闇や夜にはっきり映らなかったりということがありますので、最新のカメラを使う意味はあるのです。また、ドームカメラの場合は、透明樹脂のレンズカバーの劣化などで、目視での監視で気づかないものの、映像AIでの検知性能に大きなダメージが出てしまう場合があります。
カメラ選定については、ご自身で試されることがベストですが、導入を検討しているカメラを貸与いただければ、カメラ性能の評価を微力ですがお手伝いさせていただきます。

映像AIを試してみたい
実際に私たちのパッケージを試用してみるのがベストです。
私たちは、私たちが販売する映像AIのシステム一式を貸し出して試していただく環境がございます。独自の映像AIの開発を検討されている方も、まずは、パッケージを試していただくのをお勧めてしています。どんなものかを理解するために。
これは、試用のための機材が入った大きめの段ボールが届き、組み立てると試せるというものです。
パソコンに強い方がいらっしゃれば、あなたご自身ですべて試すこともできますし、私たちや私たちのパートナー企業さんがあなたの会社に訪問して、セットアップすることで試していただくこともできます。
みなさん、楽しんで試用して頂いています。

お客様の映像の撮影
お客様のためのシステムを開発するには、お客様の映像データが必要です。
監視カメラとスマホやビデオカメラでは、特に暗い時間帯の「絵」が異なりますし、監視カメラもメーカーによって「絵造り」が違うため、出来るだけ本番環境で、本番で使う監視カメラを使って撮影していただくことが有効です。
最も簡単なのが、監視カメラで撮影した映像を、監視カメラ用のレコーダーに保存し、そのレコーダーの映像データを提供いただくことです。
昼夜、天候など様々な環境での映像データを頂くことで確実なAIの開発を行うことができます。




